決算概要
増収増益を継続、利益の通期進捗率は50%超
2027年1月期第2四半期累計は、売上高・各段階利益ともに前年同期を上回った。
項目 | 2026/1月期 | 2027/1月期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
売上高 | 3,973百万円 | 4,226百万円 | +6.4% |
営業利益 | 1,250百万円 | 1,348百万円 | +7.9% |
経常利益 | 1,294百万円 | 1,389百万円 | +7.3% |
中間純利益 | 889百万円 | 947百万円 | +6.6% |
増収を牽引したのはソフトウエア事業である。同事業の増収額は239百万円となり、連結売上高の増加額252百万円の大半を占めた。営業利益についても、ソフトウエア事業が前年同期から104百万円増加し、広告宣伝費などの販売管理費増加を吸収した。
売上総利益率は前年同期の57.7%から61.6%へ上昇し、営業利益率も31.5%から31.9%へ改善した。広告宣伝費を積極的に投じながら、30%を超える営業利益率を維持している点は、同社の収益力の高さを示している。
項目 | 2027/1月期 | 2027/1月期 | 進捗率 |
|---|---|---|---|
売上高 | 4,226百万円 | 8,619百万円 | 49.0% |
営業利益 | 1,348百万円 | 2,680百万円 | 50.3% |
経常利益 | 1,389百万円 | 2,742百万円 | 50.7% |
中間純利益 | 947百万円 | 1,876百万円 | 50.5% |

2Q単体でも過去最高の売上高・営業利益
第2四半期単体の連結売上高は2,149百万円となり、前年同期比8.7%増加した。
ソフトウエア事業の第2四半期売上高は前年同期比10.6%増の1,635百万円となった。クラウドサービスが同11.5%増加したほか、プロダクト売上もChatLuckの大型案件などを背景に同16.4%増加している。
ただし、プロダクト売上の伸びには大型案件という個別要因が含まれる。足元の事業の継続的な成長力を見るうえでは、単発案件の影響だけでなく、クラウドサービス、ストック売上、ユーザー数、ARPUなどを併せて確認することが重要となる。

営業利益も同9.6%増となり、いずれも第2四半期として過去最高を更新した。

AppSuiteのクロスセルが示す成長構造
ユーザー数は38.9%増、利用率は23%へ
今回、成長が最も鮮明だったのがAppSuiteである。第2四半期末のクラウドユーザー数は13.2万人となり、前年同期の9.5万人から38.9%増加した。当四半期だけでも1.3万人増え、四半期として過去最大の増加数を記録している。

第2四半期のAppSuiteクラウド売上高は前年同期比37.8%増の131百万円、プロダクト売上高も同29.3%増の54百万円となった。ユーザー数の増加が、実際の売上成長につながっている。

desknet's NEOクラウドユーザーに占めるAppSuiteの利用率は、前年同期の17%から23%へ上昇した。会社は今後数年以内に30%以上を目指しており、既存顧客へのクロスセルだけでも成長余地が残る。ビジネスモデル記事で取り上げた「desknet's NEOで顧客基盤を広げ、AppSuiteを追加提案する成長モデル」が、今回の決算ではユーザー数、売上高、利用率の伸びとして表れた形だ。
「ユーザー数」と「ARPU」の両面から成長
desknet's NEOのクラウドユーザー数は前年同期比4.9%増の57.7万人となった。2024年9月の価格改定以降では最大となる、前年同期比2.7万人の増加を記録している。
一方、desknet's NEO、AppSuite、ChatLuckの売上高などから算出したARPUは、前年同期比4.3%増の588.3円となった。これに伴い、各四半期末の単月ストック売上高を年換算したARRは、同7.6%増の5,555百万円まで拡大している。
各指標は対象範囲や算出方法が異なるため、ユーザー数とARPUの伸びを単純に掛け合わせることはできない。それでも、新規ユーザーを増やす「量の成長」と、AppSuiteなどを追加提供する「単価の成長」が同時に進んでいることは読み取れる。
今後、desknet's NEOの顧客基盤が拡大しながら、AppSuiteの利用率が目標の30%へ近づけば、ARRとARPUの継続的な上昇につながる可能性がある。
キャッシュ、株価評価、次の成長戦略
現預金は約71億円、有利子負債はほぼゼロ
ネオジャパンの財務面で注目されるのが、豊富な手元資金である。
第2四半期末の現預金は7,151百万円となり、前期末から724百万円増加した。一方、有利子負債はわずか1百万円であり、実質的なネットキャッシュは約7,150百万円となる。自己資本比率も71.3%と高い。
現預金は総資産11,257百万円の約64%を占め、通期売上高予想8,619百万円の約83%、通期営業利益予想2,680百万円の約2.7年分に相当する。財務の安全性という点では、極めて余裕のある水準といえる。
なぜ、これほどキャッシュが積み上がっているのか。
個別年度の現金増減を正確に把握するにはキャッシュ・フロー計算書の確認が必要だが、事業構造からはキャッシュを生み出しやすい理由が見えてくる。
同社は、大規模な工場や在庫を必要としないソフトウエア事業を中心としている。さらに、売上の84.7%をストック収益が占め、解約率も低い。継続的な売上を確保しながら31.9%の営業利益率を実現しており、多額の設備投資や借入金返済を必要としにくい。このアセットライトで高収益な事業構造が、利益をキャッシュとして蓄積しやすい背景にあると考えられる。
潤沢なキャッシュを考慮すると、株価は割安か
ネオジャパンの株価は決算発表前日終値で1,579円、時価総額は約222億円だった。会社予想EPSを基準とする予想PERは約11.8倍、予想配当利回りは約3.4%である。
株価指標 | 概算値 |
|---|---|
株価 | 1,579円 |
時価総額 | 222億円 |
ネットキャッシュ | 71.5億円 |
ネットキャッシュ控除後の事業価値 | 151億円 |
予想PER | 11.8倍 |
PSR | 2.6倍 |
EV/売上高 | 1.8倍 |
EV/営業利益 | 5.6倍 |
予想配当利回り | 3.4% |
時価総額からネットキャッシュを差し引くと、事業そのものに対する評価は約151億円となる。通期予想に対してEV/売上高は約1.8倍、EV/営業利益は約5.6倍にとどまる。
国内の代表的なSaaS企業 | PSR(概算値) |
|---|---|
ネオジャパン | 2.6倍 |
ラクス | 5.3倍 |
マネーフォワード | 4.0倍 |
Sansan | 3.3倍 |
サイボウズ | 2.7倍 |
freee | 2.7倍 |
ネオジャパンは、この比較の下限をやや下回るうえ、黒字を確保し、営業利益率は30%を超えている。PERやネットキャッシュを差し引いた後の事業価値まで考慮すると、収益力に対する評価は保守的に見える。
ただし、SaaS各社は成長率、収益性、事業構成が異なる。高い売上成長率を続ける企業に高い倍率が付くことには合理性があり、PSRだけで単純に割安と断定することはできない。ネオジャパンの売上成長率が1桁台であることや、約71億円のキャッシュについて明確な活用策がまだ見えにくいことは、評価が抑えられる要因と考えられる。
業績拡大に株価が追いつかず、予想PERは低下
現在の株価には一定の低成長が織り込まれている一方、高収益、低解約、実質無借金という基盤を踏まえれば、評価見直しの余地もある。AppSuiteやAIによって成長率が高まる、あるいはM&Aや株主還元を通じてキャッシュの活用が進むことが、株価の再評価につながる条件となるだろう。

ネオジャパンの株価がおおむね横ばいで推移する一方、業績予想の上方修正などを通じて利益水準は拡大しており、予想PERは低下している。株価が業績の伸びに十分追随していないことが、足元のバリュエーション低下につながっている。
足元では、金利上昇などを背景に中小型株が相対的に選好されにくい相場環境が続いている。ただし、ネオジャパンは実質無借金で潤沢なネットキャッシュを保有しており、借入金利の上昇が業績に与える直接的な影響は限定的とみられる。こうした財務基盤と収益力を踏まえると、現在の予想PER約11.8倍は低い水準にあり、業績に対する株価評価には見直しの余地があると考えられる。
「SaaSの死」から、選別と再評価の市場へ
2026年前半の米国市場では、AIエージェントが現在のソフトウエアを置き換えるとの不安から、「Death of SaaS」や「SaaSpocalypse(SaaSの終焉)」と呼ばれる売りが広がった。米S&P500ソフトウエア・サービス指数は、1月28日以降の約7日間でおよそ1兆ドルの時価総額が減少したと報じられている。
しかし、足元では市場の見方に変化も生じている。米国のソフトウエア関連ETFは2026年2月27日から8月18日までに25%上昇した。人事ソフト大手Workdayには大手投資会社による買収の可能性が報じられ、企業向けソフトウエアが持つ継続的なキャッシュ創出力や、AI機能を追加する余地が改めて評価された。また、Snowflakeはクラウドデータ基盤とAI製品の需要を背景に通期予想を引き上げ、発表後の株価は時間外取引で20%超上昇した。
これは、SaaS全体が同じ水準で再び評価されたということではない。市場の見方が「AIに置き換えられるか」だけでなく、「現在利用している顧客の業務に深く組み込まれているか」「安全性や権限管理を担えるか」「顧客データを活用してAIを製品価値に転換できるか」へ移りつつあると考えられる。AIに負けるSaaSと、AIを取り込んで成長するSaaSの評価の差が広がり始めたともいえる。
この点で、ネオジャパンは再評価につながるポイントをいくつか備えている。desknet's NEOは企業や自治体の日常業務に組み込まれ、解約率は0.42%と低い。AppSuiteによるクロスセルも進み、AIアシスタントやAIエージェントを現在の製品へ組み込む計画もある。新たなAI企業に置き換えられる立場ではなく、現在の顧客接点と業務基盤にAIを重ねる企業へ移行できれば、AIの進化は同社の製品価値とARPUを高める機会になり得る。
もっとも、現時点ではAI機能の課金方法や業績への寄与は明らかではない。株価の本格的な再評価には、AIの搭載そのものではなく、契約数、AppSuite利用率、ARPU、解約率、利益成長といった数値で効果を示す必要がある。市場がSaaS企業を同じ水準で見るのではなく、実績によって評価する環境へ移るからこそ、ネオジャパンの安定性に成長加速が加わるかが重要となる。
AIは次のARPU成長を担うか
ネオジャパンは今後の成長戦略として、
- desknet's NEOの製品進化とAppSuiteなどのクロスセル
- 海外事業の売上拡大
- 次世代接客AIエージェント「LiveX AI」の販売拡大
の3点を掲げている。
なかでも既存の顧客基盤と収益への波及という観点から注目したいのが、desknet's NEOへのAI実装である。
同社はすでにdesknet's NEOへ生成AIへのアクセス機能を搭載し、次の段階として社内規程やマニュアルなどのデータを参照するAIアシスタントを実装した。今後は、スケジュール登録時に会議室予約や経路検索などを能動的に提案するAIエージェント、さらに外部サービスとのAPI連携拡充を計画している。
目指しているのは、AIを単独の特別なツールとして提供することではなく、日常業務の中で意識せずに利用できる機能としてdesknet's NEOへ組み込むことである。これが実現すれば、同社の製品は情報共有ツールから、ユーザーの業務を能動的に支援する基盤へ進化する可能性がある。
足元ではAppSuiteのクロスセルがARPUの上昇を牽引しているが、将来的にはAIによる主力製品そのものの付加価値向上が、次のARPU成長につながる可能性がある。一方、AI機能の提供形態や課金体系、AI利用に伴う原価の管理については、まだ確認すべき点が残る。AI機能の搭載が実際の契約獲得、解約率の低下、ARPUの上昇にどう結びつくかが今後の焦点となる。
海外事業では、マレーシア、タイ、フィリピンのASEAN3社による「One Team体制」を構築し、マーケティング、ウェブサイト運営、人材戦略、サービス運用を共同で進める。2029年1月期に向けてASEANでクラウド1万ユーザーを目標としているが、現状の事業規模はまだ小さく、今後はユーザー数の拡大とともに収益貢献を確認したい。
新規事業のLiveX AIについては、実店舗の接客AIアバター、問い合わせチャットボット、イベント会場でのファンエンゲージメントなどへの展開を進めている。複数企業で導入に向けたPoCを実施し、desknet's NEOの問い合わせサイトでは80~90%程度の自己解決率を実現している。こちらも現時点では将来性を検証する段階であり、PoCから本導入への移行と売上規模の拡大が評価のポイントになる。
今後の注目ポイントとまとめ
ネオジャパンの2027年1月期第2四半期決算は、増収増益を継続し、利益の通期進捗率が50%を超える順調な内容だった。なかでも、AppSuiteのクラウドユーザー数が38.9%増加し、利用率が17%から23%へ上昇したことは重要である。既存の顧客基盤を生かしたクロスセルが、ARRとARPUの成長として表れ始めている。
今後の注目点は3つある。第1に、AppSuite利用率が目標の30%へ近づき、ARRと利益を継続的に増加させられるか。第2に、約71億円のネットキャッシュを成長投資や株主還元へどう配分するか。第3に、AI、海外、LiveX AIが新たな売上・利益を生み出せるかである。
現在の株価には、同社の売上成長率が1桁台にとどまることや、豊富なキャッシュの具体的な活用策が見えにくいことが反映されていると考えられる。一方、ストック売上比率84.7%、解約率0.42%、営業利益率31.9%という収益基盤を持ち、ネットキャッシュを差し引いた事業価値は約159億円にとどまる。AppSuiteに続いてAIが成長率とARPUを高め、豊富なキャッシュが成長へ配分されれば、業績だけでなく株価評価が見直される可能性がある。
米国市場でも、企業向けソフトウエア株が一律に売られる動きから、継続収益やAI活用の実態を個別に評価する動きへ変化し始めている。すべてのSaaSが再評価されるわけではないが、顧客業務に深く入り込み、AIを現在の製品価値へつなげられる企業には見直しの余地がある。今回の決算は、ネオジャパンが持つ安定した収益基盤に加え、クロスセルによる足元の成長と、次の評価見直しに必要なポイントが見えた決算だったといえる。
※株価および株価指標は2026年9月10日終値を基準とした概算。比較企業のPSRは2026年6月末時点。米国市場の情報はReuters(2026年2月5日、8月18日、9月2日)を参照。株価変動や業績予想の変更により数値は変動する。本記事は特定の株式の売買を目的としたものではない。

はじめに
2026年9月11日、株式会社ネオジャパン(3921)は2027年1月期第2四半期決算を発表した。
今回の決算で特に注目したいのは、主力製品「desknet's NEO」の顧客基盤を活用したクロスセルの進展である。ノーコード業務アプリ作成ツール「AppSuite」のクラウドユーザー数は前年同期比38.9%増加し、desknet's NEOクラウドユーザーに占めるAppSuiteの利用率は、前年同期の17%から23%へ上昇した。
新規ユーザーを獲得する「量の成長」に加え、既存ユーザーへのクロスセルによって1ユーザー当たりの売上高を高める「単価の成長」も進んでいる。さらに今後は、desknet's NEOへのAI機能の搭載により、製品価値とARPUを一段と引き上げられるかが焦点となる。
本記事では、足元の業績に加え、ネオジャパンの成長構造と今後の注目点を整理する。