アイビーシーは、ITセキュリティのどこを担っているのか
アイビーシーの事業を理解するうえで、まず押さえたいのは、「ITを守る会社」といっても、その領域にはいくつもの種類があるということです。
領域 | 役割 | 例えるなら |
|---|---|---|
ウイルス対策 | PCや端末を守る | 入口の警備員 |
脆弱性診断 | システムの弱点を見つける | 建物の点検員 |
WAF・攻撃遮断 | Webサービスへの攻撃を防ぐ | 危険車両を止めるゲート |
ログ分析 | 怪しい動きを検知する | 防犯カメラの監視 |
ネットワーク性能監視 | 通信や機器の状態を見える化する | 交通管制センター |
この中で、アイビーシーが担うのは「ネットワーク性能監視」の領域です。
つまり、攻撃を直接ブロックする会社というより、ネットワーク通信の“状態”を見える化し、障害や異常の兆候を早くつかむ会社です。
サーバーやネットワーク、クラウドの間を流れる通信を見て、
- どこが混雑しているのか
- どこに負荷がかかっているのか
- どこで障害が起きそうなのか
を把握する。
アイビーシーは、ITインフラの交通管制センターのような役割を担っています。

死活監視ではなく、性能監視を見る会社
アイビーシーは、ITインフラの性能監視・可視化を軸とする企業です。
ここで重要なのが、「死活監視」と「性能監視」の違いです。
種類 | 見ているもの | 説明 |
|---|---|---|
死活監視 | 動いているか、止まっているか | 生存確認 |
性能監視 | 通信量、負荷、遅延、CPU、メモリなど | 健康診断 |
死活監視は、「サーバーが生きているか」を見る仕組みです。
一方、性能監視は、「まだ動いているが、危険な状態に近づいていないか」を見る仕組みです。
企業のITシステムでいえば、次のような状態を捉えます。
- サーバーは動いているが、CPU使用率が高い
- ネットワークはつながっているが、通信量が急増している
- クラウドは使えているが、応答が遅くなっている
- 普段とは違うトラフィックが発生している
こうした変化を早く見つけることができれば、障害が大きくなる前に対処できます。
アイビーシーの事業は、この「障害が起きる前に気づく」ための仕組みを提供していると理解すると分かりやすいです。
業績サマリー――高い収益性を持つストック型ビジネス
アイビーシーの業績に注目すると、とくに利益率の高さが目立ちます。
その背景には、主に3つの要因があります。
- 自社開発ソフトウェアが主力であること
- ライセンス型で販売され、ストック型で収益が積み上がること
- IT運用支援やセキュリティ製品販売への拡張余地があること
同社の主力製品であるSystem Answer G3は、企業のIT運用に深く入り込む製品です。
一度導入されると、日々の監視画面として使われ、過去データが蓄積され、運用フローにも組み込まれます。そのため、簡単には外れにくい性質があります。
さらに、顧客企業のIT環境は、事業規模の拡大とともに変化していきます。
- クラウドを追加する
- 拠点が増える
- サーバーを増設する
- ネットワーク機器が増える
- セキュリティ製品を追加する
このような変化に伴い、監視対象も増えていきます。
監視対象が増えれば、監視項目も増えます。
アイビーシーの収益は、「新規導入」だけでなく、「更新」「監視対象の追加」「周辺商材の販売」によって積み上がる構造です。
つまり、単に売上が伸びるだけでなく、高収益なライセンス販売を軸に、既存顧客の中で単価を高められる余地があります。
この点が、同社の利益面での魅力です。
売上構成――主役はライセンス、周辺にサービスと物販
アイビーシーの売上は、大きく3つに分けられます。

区分 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
ライセンス販売 | System Answerシリーズなどの自社ソフト販売 | 事業の主役 |
サービス提供 | IT運用支援、運用代行、導入支援など | 顧客を支える役 |
その他物販 | セキュリティ製品、ネットワーク機器、サーバーなど | ライセンスと相性のよい周辺商材 |
中心にあるのは、ライセンス販売です。
これは、System Answer G3などの自社ソフトウェアを販売する収益です。
サービス提供は、顧客のIT運用を支える収益です。単に製品を売るだけでなく、顧客のIT担当者に代わって運用を支援することで、より深く顧客に入り込むことができます。
その他物販は、System Answer G3と相性のよいセキュリティ製品やネットワーク関連機器などの販売です。
つまり、アイビーシーは「ソフトを売って終わり」の会社ではありません。
主力ソフトを起点に、運用支援やセキュリティ製品の販売まで広げられる会社です。
ここが、単なるソフトウェア会社に見られがちな同社の見せ方を変えるうえで重要なポイントです。
アイビーシーは、ソフトウェアを提供する会社であると同時に、複雑化したITインフラを読み解き、運用まで支える専門家集団でもあります。
主力製品System Answer G3とは
System Answer G3は、企業のITシステム全体の状態を見える化するソフトです。

企業のIT環境には、さまざまな機器やサービスがあります。
- 社内ネットワーク
- サーバー
- データセンター
- クラウド
- 仮想環境
- セキュリティ製品
- 拠点間ネットワーク
しかも、それぞれが別々のメーカーで作られていることも珍しくありません。
ある部分はNEC、ある部分は富士通、ある部分はCisco、ある部分はクラウドサービス。こうした複数メーカーの製品が組み合わさった環境を、マルチベンダー環境といいます。
マルチベンダー環境では、問題が起きたときに原因を見つけるのが難しくなります。
通信が遅い理由は、サーバーなのか。ネットワークなのか。クラウドなのか。通信経路なのか。
原因が分からなければ、対処も遅れます。
System Answer G3は、こうした複数メーカーの機器やサービスをまとめて監視し、1つの画面で状態を把握できるようにする製品です。

道路にたとえるなら、街中の道路、信号、トンネル、橋、インターチェンジを、1つの交通管制センターで見ているようなものです。
- どこが混んでいるのか
- どこに負荷がかかっているのか
- どこで事故が起きそうなのか
- このままいくと、どこが詰まりそうなのか
System Answer G3は、ITシステムの中でこれに近い役割を担っています。

はじめに
銀行のATMが止まる、電車のシステムに障害が起きる、学校のネットワークがつながらない、ECサイトが急に重くなる。
こうした出来事は、私たちの目には「システム障害」として映ります。
しかし、システムはある日突然、何の前触れもなく止まるとは限りません。多くの場合、その前から小さな異変が起きています。
・通信量が急に増える
・サーバーに負荷がかかる
・ネットワーク機器の反応が遅くなる
・クラウドと社内システムの間で通信が詰まる
問題は、その異変が目に見えにくいことです。
人間であれば、熱、血圧、心拍数を測ることで体調の変化に気づけます。
ところが企業のITシステムでは、サーバー、ネットワーク機器、クラウド、セキュリティ製品が複雑につながっているため、「どこで何が起きているのか」を把握することは簡単ではありません。
その“見えないITの状態”を見えるようにする会社が、アイビーシーです。
同社は、「IT障害をゼロにする」というミッションを掲げ、企業や自治体、教育機関などのITインフラを監視・可視化するソフトウェアを提供しています。
本記事では、アイビーシーがどのような会社で、何を売り、なぜ高い収益性を実現できているのか。そして、AI・クラウド時代にどのような拡大余地があるのかを整理します。