全ての事業の根底にある2つの使命と目指すべき社会

C&Rグループは、グループ統括理念として「人の能力は、無限の可能性を秘めています。私たちは、その能力を最大限に引き出し、人と社会の幸せのために貢献します。」と掲げています。
その理念を事業として実現するために定めているのが、「プロフェッショナルの生涯価値の向上」と「クライアントの価値創造への貢献」の2つの果たすべき使命です。

経営理念

「人の能力は、無限の可能性を秘めています。私たちは、その能力を最大限に引き出し、人と社会の幸せのために貢献します。」

使命

「プロフェッショナルの生涯価値の向上」

「クライアントの価値創造への貢献」

つまり同社はプロフェッショナルとクライアント双方に対する使命を同時に果たすことを大切にしています。
例えば、プロフェッショナルに仕事を提供するだけでは、クライアントが求める成果につながらない可能性があります。一方で、クライアント側の都合だけを優先すれば、プロフェッショナルの能力やキャリアを十分に活かせません。
このように、C&Rグループはプロフェッショナルの能力や志向を理解し、その力を必要とする企業や組織につなぐことで、プロフェッショナルとクライアント双方の価値を同時に高めることで、人と社会の豊かさを創生することを目指しています。

「プロフェッショナルの生涯価値」とは何か

ここでいうプロフェッショナルの生涯価値とは、単に年収や報酬を高めることだけを意味していません。

プロフェッショナルには、企業に所属する、派遣社員として働く、フリーランスとして活動する、自ら会社を立ち上げるなど、さまざまな活躍の形があります。また、キャリアの段階によっても、適切な働き方は変化します。

若手の時期には、企業や制作現場で経験を積むことが重要かもしれません。経験を重ねた後は、独立して自分の企画を形にしたいと考える人もいるでしょう。チームを率いる立場に進む人もいれば、自ら生み出した作品や技術を知的財産として展開する人もいます。
黒崎氏はインタビューにおいて、「専門的な能力を持っていることと、自ら適切な仕事を獲得できることは別である」と説明しています。
優れた映像ディレクターやクリエイターであっても、営業力があるとは限りません。自分に適した仕事や組織を探し、自らの能力を正しく伝え、契約や報酬の条件を交渉し続けることは、専門的な能力とは異なる力を必要とします。

そこでC&R社が、その人の強みや志向を理解し、活躍できる案件や組織、プロジェクトを用意します。
必要であればチームを組み、本人のアイデアを企画や事業へ発展させます。完成した作品やコンテンツについては、権利を管理し、より大きな収益機会につなげることもあります。
つまり、プロフェッショナルの生涯価値を高めるとは、その人が持つ能力を、その時々で最も適した形で社会の価値へ変えていくことです。

その無限の可能性を秘めた人の能力を最大限に引き出し、人と社会の幸せのために貢献するのがC&Rグループなのです。

理念は、社内に掲げる標語ではない。重要なのは日々の業務で体現すること

C&Rグループでは、理念を採用や教育の段階から重視しています。
現在も映像などを通じて入社前から会社の考え方を伝えているほか、かつては社内研修の際に理念や創業の経緯を演劇形式で伝えていたとのことです。黒崎氏曰く、「うちの社員で理念を語れない社員はいない」というほどで、理念を軸にプロフェッショナル、クライアントが集い、働いています。
ただし、同社がより重視しているのは、日常の業務で理念を体現することです。

例えば、C&Rグループを通じて働いていたプロフェッショナルが、派遣先や取引先の企業から評価され、派遣先や取引先の社員になりたいと希望することがあります。
短期的に考えれば、C&Rグループに所属し続けてもらい、たくさん稼働してもらうことの方が同社の売上にはつながりやすいでしょう。それでも、本人にとって転籍が最善ということであれば、その選択を尊重し応援するといいます。

それは何故か。

それは、同社から転籍したプロフェッショナルがより活躍することができれば、プロフェッショナルの生涯価値を最大化することができるからです。
さらに、転籍後も関係が切れるわけではないため、転籍した本人がより活躍することで、クライアント側の担当者としてC&Rグループと仕事をすることも期待できます。

一つの契約を維持することではなく、その人が長く活躍できることを優先する。それにより、将来的なC&Rグループのビジネスの機会を増やすことができ、さらに次のプロフェッショナルのチャンスも創出できるという、継続的かつ相乗的な価値創造のサイクルを実現することができるからです。これを同社は「次稼働」とよんでいます。

短期的な稼働数の向上ではなく、長期的なビジネスや社会的価値の創出を重視しているのです。
この経営判断には、まさに「プロフェッショナルの生涯価値の向上」という理念が反映されています。

このように理念はC&Rグループにおいて現場に強く根付いています。
誰にどの仕事を提供するか、案件終了後にどのような支援を行うか、短期的な収益と長期的な関係のどちらを選ぶかを決める、経営と現場の判断基準になっているのです。そして、新たな価値を生み出し、人と社会の豊かさを創生するとともに、関わる全ての人の幸せを追求しています。

プロフェッショナルの能力を価値に変える3つの方法

C&R社の事業には、大きく3つの柱があります。

同社は、エージェンシーを派遣・紹介、プロデュースを開発・請負、ライツマネジメントを知的財産の企画開発・流通と整理しています。
加えて、プロフェッショナルの能力と先端技術を組み合わせたソリューションや、教育事業にも取り組んでいます。
これらは、単なる売上区分ではなく、プロフェッショナルの能力を活かし、クライアントや社会の価値へ変えるための構成となっています。

エージェンシー――人と仕事をつなぐ

エージェンシー事業では、企業や組織が必要とする専門人材を派遣・紹介します。
例えば、テレビ局や制作会社へ映像ディレクターを派遣する、ゲーム会社へデザイナーやエンジニアを紹介する、病院へ医師を紹介するといった形です。
収益は、人材派遣の場合には企業から受け取る派遣料金と人件費との差額、人材紹介の場合には採用成立時の紹介手数料から生まれます。
この部分だけを見ると、一般的な人材会社と大きく変わらないようにも見えます。

しかし、C&Rグループが対象としているのは、業務内容や能力を一般的な職種分類だけでは判断しにくい専門職です。

同じゲームクリエイターであっても、企画、デザイン、シナリオ、3DCG、プログラミングでは求められる能力が異なります。映像ディレクターや医師、建築士についても、過去の経験や得意領域によって適した仕事は変わります。
そのため、単に求人情報と職務経歴書を照合するだけでは、適切なマッチングはできません。
各分野の業務やキャリアを理解するエージェントが、プロフェッショナルの能力と志向を把握し、クライアント側の課題と結び付ける必要があります。

C&Rグループのエージェンシー事業は、人数を供給するだけでなく、プロフェッショナルが最も能力を発揮できる場所を探し出すことにこそ強みと独自性があるのです。

プロデュース――人を組み合わせ、成果をつくる

クライアントが抱える課題は、一人のプロフェッショナルを紹介するだけでは解決できないこともあります。
そのような場合には、C&Rグループが複数の専門人材を集めてチームを組成し、企画、制作、開発、進行管理、品質管理までを一括して請け負います。
これがプロデュース事業です。

映像、ゲーム、Web、広告・出版、AI/DX、建築など、さまざまな分野でプロジェクトを組成しています。
例えば、テレビ局のケースでは現在放送している番組を制作するだけでなく、常に新しい企画を求めています。
C&Rグループには、ディレクター、プランナー、映像クリエイターなど、多くのプロフェッショナルとの接点があります。そこからアイデアを集め、番組企画としてテレビ局へ提案する。企画が採用されれば、必要な人材を集めてチームをつくり、番組制作まで担います。
この場合、C&Rグループは、企画を形にし、必要な能力を組み合わせ、プロジェクト全体を動かして成果を生み出す機能を提供しているといえます。

インタビューでは、こうした役割について「ディレクターズカンパニー」や「プロデュースカンパニー」に近いという説明もありました。
人、仕事、企画、技術を結び付け、事業として成立する形にまとめる。

ここに、C&Rグループの核となる強みがあります。

ライツマネジメント――生み出された価値を一度で終わらせない

プロフェッショナルが生み出した作品やアイデアは、納品や放送が終われば価値がなくなるわけではありません。
映像、ゲーム、漫画、小説、デザイン、キャラクター、イベントなどは、知的財産として別の媒体や市場に展開できる可能性があります。
C&Rグループのライツマネジメント事業では、こうした知的財産の企画、開発、管理、流通を行います。

テレビ番組であれば、放送後にイベントを開催する、関連商品を販売する、海外へ番組を展開する、別の配信媒体で利用するといった二次展開が考えられます。
ゲームや漫画であれば、続編、映像化、商品化、海外配信などへ広げることができます。
こうした展開によって、プロフェッショナルが生み出した価値を一度の報酬で終わらせず、長期的な収益へ変えていきます。
同社が掲げる「プロフェッショナルの生涯価値の向上」は、仕事の紹介だけではなく、プロフェッショナルが生み出した知的財産の価値を高めることにもつながっています。

3つの事業は、理念を実現するための選択肢

同社は理念の実現に向けて、これまで説明したエージェンシー、プロデュース、ライツマネジメントの事業を選択肢としています。
一人のプロフェッショナルを企業へ紹介することが最適な場合もあれば、複数の人材を集めてチームを組む方がよい場合もあります。すでに生まれている作品やアイデアを、知的財産として流通させるところから始まる場合もあります。
このように、プロフェッショナルの能力をどのような形で活かせば、本人とクライアントの双方に最も大きな価値が生まれるかというポイントが重要となります。

3つの事業は、C&Rグループの理念を実現するために用意された異なる方法だと考えると、同社のビジネスモデルを理解しやすくなります。

一度の仕事で終わらない人材循環モデル

人材会社の事業を考える際、登録者数や稼働人数に注目しがちですが、C&Rグループが重視しているのは、その時点で何人が働いているかだけではありません。
前述した通り「次稼働」を重視している同社においては、一つのプロジェクトが終了した後、その人が次にどのような仕事をし、どのようなキャリアを歩んでいるか、まさに「プロフェッショナルの生涯価値」が向上しているかどうかをしっかりとみています。
インタビューでは、案件終了後に別の仕事へ移れているかを重視し、次の稼働やキャリアにつなげることを強く意識していると説明されたのが印象的でした。

また、プロフェッショナルにとって次の活躍(次稼働)の場は多岐にわたります。
別のクライアントで働く人もいれば、C&Rグループの社員や制作スタジオのメンバーになる人もいます。クライアント企業へ転籍する人、フリーランスとして独立する人、独立後にC&Rグループから案件を受注する人もいます。
契約形態や所属先が変わっても、C&Rグループとの関係が継続していれば、その後も新しい仕事やプロジェクトにつながる可能性があります。自社に所属し続けてもらうことよりも、プロフェッショナルが活躍し続けることを優先し、その過程で長期的な関係を築いていきます。

C&R社の人材ネットワークは、過去から現在まで、派遣、紹介、制作、転籍、独立、協業など、さまざまな形で関係を築いてきたプロフェッショナルのつながりです。
公式サイトにおいても、プロフェッショナルの発掘、育成、就業支援にとどまらず、専門分野や技術を持つ人が力を最大限に発揮できる環境を提供し続けることが示されています。
この長期的な関係が、新たな案件を生み、新たな人材を呼び込み、人材の好循環を繰り返しながらさらにネットワークを広げていきます。

最大の参入障壁は、専門業界で積み上げた信頼

C&Rグループの強みとして、プロフェッショナルやクライアントのネットワーク規模が挙げられますが、なぜ多くのプロフェッショナルや企業がC&Rグループと関係を持つようになったのかという点が重要です。

「業界は、簡単には信用してくれない」

人材紹介業には許認可制度はあるものの、特許技術のように目に見える参入障壁はありません。
一方で、医療、法曹、映像などの専門業界は、それぞれ独自の慣行や人間関係を持っており、外部企業が短期的な利益だけを目的に参入しても、業界内の信頼を得ることは困難です。

C&Rグループの医療分野も立ち上げ当初から順調だったわけではなく、医療分野は長期間にわたって赤字が続いたことがインタビューでは語られました。
当時、地方の病院では医師不足などにより、病院機能の維持が難しくなる事例がありました。また、医師の配置やキャリアは大学の医局との関係が強く、医局を越えた人材の移動が困難な状態でした。
C&Rグループは、こうした医療現場の課題に対して、短期的に紹介手数料を得ることだけを目的にするのではなく、病院や医師との関係を地道に築いていきました。

その積み重ねによって、医療機関や医師からの信頼を獲得していきます。

医学生から開業まで関係が続く

医療分野では、医学生と全国の臨床研修病院をつなぐイベントなども実施しています。
医学生は、医学部を卒業した後にどの病院で研修を受けるかを選びますが、学生の段階で全国の病院の特徴を把握し、自分に適した研修先を見つけるハードルは高くなっています。

そこでC&Rグループが、医学生と病院が接点を持つ機会を提供します。
医学生の時期に接点を持った人が、医師になった後に関連サービスを利用することもあります。数年後に転職を考えた際には、医師紹介サービスを利用する可能性があります。さらに、独立してクリニックを開業する際には、開業支援を利用することもあります。

つまり、一度の就職支援で終わるのではなく、医学生から勤務医、転職、開業まで、長期にわたって関係が続きます。
この構造は、「プロフェッショナルの生涯価値の向上」という理念が、実際のビジネスとして形になった事例です。

泥臭さが参入障壁になる

閉鎖性の高い専門業界で、現場の課題を理解し、関係者との約束を守り、長期間にわたって支援を続けることは実に大変なことです。
インタビューでは、地道で泥臭い取り組みを積み重ねてきた趣旨の説明がありました。
一見すると、誰でも参入できる市場であっても、業界の内側で本当に信用されるまでには長い時間がかかります。
この信頼があるからこそ、プロフェッショナルが集まり、クライアントから案件が寄せられ、さらに新しいサービスを展開できます。

C&Rグループのネットワークは、競争優位性の起点というよりも、長期間にわたって信頼を積み上げた結果として形成されたものだと考えられます。

人材会社と制作会社をつなぐ、プロデュース力

C&Rグループは、人材を企業へ送り出すだけでなく、自ら制作・開発を行う体制を持っています。
その中核が、ゲーム・映像・CG・Web・アニメ・広告・漫画・小説・建築・ファッション・XRなどの制作開発チームを包括した「C&R Creative Studios」。社員を中心としたクリエイターは約2,000名で、日本最大級の規模を誇る開発スタジオです。日本はもちろんのこと、海外市場も見据えた体制を築いており、進化を続けています。

制作組織を持つことで、C&Rグループは人材派遣や紹介だけでは対応できない案件を請け負えます。
新しいゲームを開発するためには、企画、シナリオ、デザイン、プログラミング、品質管理など、複数の能力を組み合わせたチームが必要になる場合があります。
C&Rグループがプロジェクト全体を受注し、社内外のプロフェッショナルを組み合わせることで、クライアントは成果物単位で仕事を依頼できます。

また、制作現場はプロフェッショナルを育成する場にもなります。
経験の浅い人材が実際のプロジェクトを通じて技術を身に付ける。経験を積んだ後にクライアント企業へ移る人もいれば、独立する人もいます。独立後に、再びC&Rグループのプロジェクトへ参加することもあります。
人材ネットワークが制作組織へ人を供給し、制作組織が人を育て、新たな実績と案件を生み出す。この循環によって、C&Rグループは人材会社と制作会社の両方の機能を持つようになっています。

ただし、より本質的には、人材会社か制作会社かという分類自体が重要ではありません。
C&Rグループの役割は、人材、企画、技術、案件を組み合わせ、プロジェクトとして成立させることです。
その意味では、同社の中心的な能力は「プロデュース」にあります。