CAICA DIGITALグループを構成する4つの事業

CAICA DIGITALのビジネスモデルを理解するうえで、まず押さえておきたいのがグループ全体の事業構成です。
CAICA DIGITALグループは、大きく4つの事業で構成されています。

1つ目が、CAICAテクノロジーズを中心に展開する「ITサービス事業」です。金融機関向けを中心としたシステム開発やインフラ構築などを手がけており、現在のグループ収益を支える基盤となっています。
2つ目が、カイカフィナンシャルホールディングスを中心に展開する「金融サービス事業」です。暗号資産やWeb3に関連するサービスなどを展開しています。
そして、M&Aによって新たに加わったのが、ネクスが手がける「IoT関連事業」と、善光総合研究所が手がける「介護DX事業」です。
これらに加え、CAICA DIGITAL本体では、HCLSoftwareやPega Platformなどの製品・ソリューションの販売を起点に、導入、連携、セキュリティ、AI活用などを組み合わせた「DXソリューションサービス」を展開しています。

CAICA DIGITALが今後目指しているのは、現在の収益基盤であるITサービス事業を維持しながら、DXソリューションサービスに加え、IoTや介護DXなどのソリューション領域を成長させることです。これにより、グループ全体の事業規模を拡大するとともに、ソリューション事業の売上構成比を高めていくことを目指しています。

収益基盤は金融ITを中心としたITサービス事業

CAICA DIGITALの事業を理解するうえで、まず押さえるべきなのが子会社CAICAテクノロジーズで展開するITサービス事業です。
ITサービス事業は、金融機関向けのシステム開発やインフラ構築、セキュリティ対応などを通じて培ってきた技術力と業務知見を基盤としています。金融システムは、高い信頼性、安定性、セキュリティが求められる領域です。そうした領域で蓄積してきた開発力や業務知見が、現在のCAICA DIGITALの事業基盤になっています。

同社のITサービス事業は、金融、ポイント・決済、公共・官公庁、EC・通販などの領域で、システムの企画検討から設計・構築、運用・保守までを支援するものです。フロントシステム、バックオフィス、基幹系システムまで幅広く対応してきた点に特徴があります。
これは、いわゆるシステムインテグレーション、つまり顧客企業の業務に合わせてシステムを作り、導入し、運用する事業です。
こうしたSI事業は、企業のIT投資を支える重要なビジネスです。一方で、課題もあります。従来型のシステム開発は、エンジニアの人数や稼働時間に売上が左右されやすく、人材採用や人件費の影響を受けやすい構造になりがちです。

人を増やせば売上を伸ばしやすい一方で、人を増やさなければ成長しにくい。これが、労働集約型SIの特徴です。

CAICA DIGITALが現在進めているのは、このモデルからの転換です。
金融ITや基幹システム開発で培った技術力を活かしつつ、単に「人を出して開発する」のではなく、顧客企業の課題に対して、製品、技術、運用、セキュリティ、AIを組み合わせて提供するソリューション事業へ移行しようとしています。

なぜ「労働集約型SI」から転換するのか

CAICA DIGITALが労働集約型SIからソリューション事業への転換を進める背景には、IT業界全体の変化があります。
企業のIT投資は、単なるシステム導入から、業務プロセスの見直し、データ活用、AI導入、サイバーセキュリティ対策へと広がっています。顧客企業が求めるものも、「システムを作ってほしい」から、「業務をどう変えるべきか」「既存システムをどう活かすべきか」「AIやセキュリティをどう組み込むべきか」へと変化しています。

つまり、ITベンダーに求められる役割が変わってきているのです。
従来のSIでは、顧客から要件を受け取り、それに沿ってシステムを構築することが中心でした。しかし現在は、顧客自身も課題を明確に言語化できていないケースが増えています。既存システムが複雑化し、部門ごとにデータが分断され、セキュリティリスクも高まる中で、単純な受託開発だけでは十分な価値を提供しにくくなっています。このような環境では、顧客の業務を理解し、課題を整理し、必要なソリューションを組み合わせ、導入後の運用まで支援できる企業が求められます。

CAICA DIGITALが目指しているのは、まさにこの方向です。
エンジニアの稼働量に依存するモデルから、コンサルティング、ソリューション、サービスを組み合わせたモデルへ。
ここに、同社の事業転換の本質があります。

なお、既存のSI事業そのものがなくなるわけではありません。システムインテグレーション事業はCAICAテクノロジーズが引き続き担いながら、グループ全体としてソリューション事業の比重を高めていく方針です。

DXソリューションサービスの中身

CAICA DIGITALの事業転換の中心にあるのが、DXソリューションサービスです。

DXソリューションサービスは、製品を単に販売するだけではありません。HCLSoftwareやPega Platformをはじめとする製品を軸に、顧客企業の課題に応じて導入、連携、追加開発、セキュリティ、運用などを組み合わせ、DXの実現につなげていくサービスです。
この領域を分かりやすく整理すると、CAICA DIGITALのDXソリューションは大きく4つに分けられます。

1つ目は「導入する」領域です。
HCLSoftwareやPega Platformなど、企業のDXに必要な製品・ソリューションを顧客企業の課題に応じて提供します。製品を販売して終わるのではなく、既存システムとの連携や導入、必要に応じた追加開発などを組み合わせることで、実際の業務で活用できる環境を整えていきます。

2つ目は「つなぐ」領域です。
既存システム、グループウェア、API、データベース、外部サービスなどを連携させる領域です。企業の現場では、古いシステムと新しいクラウドサービスが混在していることも多く、それらをどう接続するかがDXの重要な論点になります。

3つ目は「守る」領域です。
セキュリティ診断、脆弱性管理、端末管理、アプリケーションセキュリティなどです。DXが進むほど、企業のシステムは外部との接点が増えます。その分、情報漏えいや不正アクセスへの対策も重要になります。

4つ目は「活用する」領域です。
マーケティングDX、データ活用、AI連携、業務改善などが該当します。単にシステムを作るだけでなく、そこから得られるデータをどのように業務改善や顧客接点の強化につなげるかが問われます。

このように見ると、CAICA DIGITALのDXソリューションは、製品・ソリューションの提供を起点に、導入、システム連携、セキュリティ、データ・AI活用まで、顧客企業のDXに必要な領域へサービスを広げていることが分かります。

HCL/Pegaを活用したプロダクト型SI

CAICA DIGITALのDXソリューションを具体的に見るうえで重要なのが、HCLSoftwareやPega Platformといった外部プロダクトの活用です。
CAICA DIGITALは、HCLSoftwareの各製品を活用し、既存システムのモダナイズ、ローコード開発、端末管理、アプリケーションセキュリティ、マーケティングDXなどを支援しています。

たとえば、HCL Dominoは、企業内に残るNotes/Domino資産を活用しながら、Web・モバイル対応やAPI連携、ローコード開発へと広げるための製品です。古いシステムを一気に捨てるのではなく、既存資産を活かしながら段階的にモダナイズするという考え方です。
これは、長年のSI経験を持つCAICA DIGITALグループにとって相性のよい領域です。大企業の中には、過去に構築した業務システムが数多く残っており、それらをどう刷新するかが課題になっています。単純な入れ替えではなく、既存の業務フローやデータを理解したうえで、段階的に改善する必要があります。

HCL Volt MXは、Web、スマートフォン、タブレット、スマートデバイス向けのアプリを構築するローコード/ノーコード開発基盤です。企業の中で必要になる業務アプリを、より短期間で開発するための仕組みといえます。
HCL BigFixは、PC、サーバー、スマートデバイス、IoT機器などを統合管理するためのソリューションです。パッチ管理、資産管理、脆弱性管理などを通じて、企業のIT運用を支援します。
HCL AppScanは、Webアプリケーションやモバイルアプリ、APIなどの脆弱性診断を支援する製品です。システムを作った後にセキュリティを確認するだけでなく、開発工程の早い段階からセキュリティを組み込むDevSecOpsの考え方ともつながります。
HCL Unicaは、マーケティングオートメーション領域の製品です。顧客データを活用し、メール、SMS、プッシュ通知、ランディングページなどを通じて、顧客接点を最適化するために使われます。
また、Pega Platformは、BPMやCRM、ルールベースの業務アプリケーション開発に活用されるプラットフォームです。業務プロセスを整理し、顧客対応や社内オペレーションを高度化する領域で活用されます。

これらの製品に共通するのは、CAICA DIGITALが自社で全てをゼロから開発するのではなく、外部の有力プロダクトを活用しながら、顧客企業の課題に合わせて導入・追加開発・運用保守を担うという点です。

これは、労働集約型の受託開発とは異なります。
プロダクトを軸にしながら、顧客ごとの課題に合わせてコンサルティングや実装を行う、プロダクト型SIに近いモデルです。

AI駆動型開発とセキュリティは、SIの付加価値を高める

CAICA DIGITALの事業転換を考えるうえで、AI駆動型開発とセキュリティも重要な柱です。

AI駆動型開発とは、生成AIを活用して、要件定義、設計、実装、テスト、運用保守といった開発工程を効率化する取り組みです。単にAIでコードを書くという話ではなく、長年のシステム開発で蓄積した業務知識や技術ノウハウとAIを組み合わせ、開発のスピードと品質を高めようとするものです。
特に金融機関や基幹システムのような領域では、既存システムが複雑化・ブラックボックス化しているケースも少なくありません。長年使われてきたシステムの仕様が十分に整理されていなかったり、担当者の退職によって保守が難しくなっていたりするケースもあります。
こうした場面では、既存システムの仕様を読み解き、必要な機能を整理し、段階的に刷新していく力が求められます。AIの活用は、その作業を効率化する可能性があります。

一方で、AIを使えば全てが自動化できるわけではありません。業務理解、品質管理、セキュリティ、顧客との調整は引き続き重要です。だからこそ、CAICA DIGITALにとっては、これまでのSI経験とAIを組み合わせることが差別化のポイントになります。

セキュリティも同様です。
DXが進むほど、企業のシステムは外部サービスやクラウド、モバイルアプリ、APIと接続されます。その結果、攻撃対象も広がります。CAICA DIGITALが提供するWebアプリケーション診断、ネットワーク診断、スマートフォンアプリ診断、疑似攻撃訓練などは、顧客企業のシステムやサービスを「守る」ためのソリューションです。
金融ITで培った信頼性やセキュリティ知見を、DXソリューションの中に組み込む。ここにも、同社が単なる開発会社から高付加価値なソリューション企業へ移行しようとしている姿が見えます。

ネクス買収で獲得した「現場データを取る力」

CAICA DIGITALの事業転換を考えるうえで、M&Aも重要なポイントです。
同社は、IoT関連事業を手がけるネクスをグループに取り込みました。ネクスは、データ通信端末、M2M、テレマティクス、5G/RedCap対応端末、エッジAIコンピュータなどを展開する会社です。

ネクスの役割を一言で表すなら、現場データを取得する入口です。
CAICA DIGITALが従来持っていたのは、主にシステム開発、AI、Web3、セキュリティといったソフトウェア側の機能でした。一方で、企業や社会の現場で発生するデータを取得するには、端末や通信技術が必要になります。

たとえば、車両にOBDⅡ端末を接続すれば、速度、燃費、位置情報、急ブレーキ、急発進、アイドリングなどの情報を取得できます。これらのデータをクラウドで管理すれば、安全運転指導、車両管理、フリートマネジメント、業務効率化に活用できます。

M2M領域では、自動販売機、エレベーター、メーター、産業機器などがネットワークを通じて情報をやり取りします。人手を介さずに機器同士が通信し、状態を監視したり、異常を検知したり、必要な情報を送信したりする仕組みです。

さらに、エッジAIでは、カメラやセンサーから得られる情報をクラウドに送る前に、端末側で処理することができます。たとえば、人流解析、混雑検知、デジタルサイネージ、施設内の状況把握などに応用できます。

これらは、CAICA DIGITALにとって重要な意味を持ちます。
DXソリューションを提供するうえで、企業の現場からデータを取得できるかどうかは大きな差になります。システム開発だけでなく、現場の機器や端末からデータを取り、通信し、クラウドやAIへつなぐことができれば、提案できる範囲は大きく広がります。

つまりネクスの買収は、単にIoT事業を追加したというより、CAICA DIGITALが現場データ活用型のソリューション企業へ進むために、データ取得の入口を獲得したM&Aと見ることができます。

善光総研買収で介護DXの実装力を獲得

もう一つ重要なのが、善光総合研究所の子会社化です。
善光総研は、介護DXを手がける会社です。介護記録や請求、見守り、施設運営データを扱う「SCOP」シリーズを展開しているほか、スマート介護士の育成、介護事業者向けコンサルティング、介護機器メーカーの開発支援、自治体向けの介護DX支援などを行っています。

介護業界では、人手不足、記録業務の負担、紙やFAXに依存した情報連携、介護機器やセンサーの活用不足といった課題があります。現場では、介護職員が利用者の状態を記録し、申し送りを行い、請求や報告のための情報を整理する必要があります。こうした業務は、介護の質を支える一方で、現場職員にとって大きな負担にもなります。

善光総研の特徴は、単に介護ソフトを提供するだけではなく、介護現場の業務改善や人材育成、行政・自治体との連携、介護テクノロジーの実証支援まで手がけている点です。

介護DXは、システムを導入すれば終わりではありません。現場の業務フローを理解し、職員が使える形に落とし込み、データを活用できる運用へ変えていく必要があります。その意味で、善光総研はCAICA DIGITALにとって、介護現場への実装力を持つ会社だといえます。

CAICA DIGITALが持つAI、ブロックチェーン、セキュリティ、システム開発力に、ネクスのIoT通信技術、善光総研の介護現場の知見やSCOPを組み合わせることで、介護現場のデータ活用を高度化する構想が見えてきます。

たとえば、見守りセンサーや介護機器から取得されるデータ、SCOPに蓄積される介護記録、施設運営データを統合管理できれば、人員配置の最適化、転倒予防、入浴支援の効率化などにつなげられる可能性があります。

ここで重要なのは、CAICA DIGITALが介護業界に単独で新規参入するのではなく、介護現場の知見を持つ善光総研を通じて参入している点です。

IT企業が介護DXを語る場合、技術先行になりがちです。しかし介護現場では、業務の実態や職員の負担、利用者へのケア品質、行政制度への対応などを理解しなければ、システムは定着しません。善光総研の子会社化は、その現場実装の難しさを補う意味があります。

なお、善光総研は2026年10月期第3四半期から損益計算書に連結される予定です。ビジネスモデル上は、同社がCAICA DIGITALグループの介護DX領域を担う中核会社になると見てよいでしょう。