企業の展示会を歩いて見えた、AI時代の相場の変化
田代
前編では、kenmoさんの投資判断の出発点が、データよりも観察にあるというお話がとても印象的でした。
その流れで、今足元で何を見ているのかを伺いたいんですが、今年に入ってかなりご自身の中でも変化があったそうですね。
kenmo氏
そうですね。
特に2月は、自分の中でかなり反省した時期でした。
周りのうまいトレーダーが大きく利益を上げている中、自分は思うように稼げていなかったので、これはまずいなと。
田代
その時、どういう行動を取られたんですか。
kenmo氏
かなり大きめの反省会を1人でやりました。
そのうえで、これは机の前で考えているだけじゃだめだなと思ったんです。
現場を見に行かないといけない。そう思って企業の展示会に行き始めました。
SaaSの展示会で感じた、明らかな違和感
田代
展示会に足を運ぶというのは、kenmoさんらしいですね。
最初に見に行かれたのはIT系だったんでしょうか。
kenmo氏
そうです。
IT関連の展示会に行ったんですが、そこでかなりはっきりした違和感がありました。
会場にあまり人が入っていなかったんですよ。
田代
それは、かなり象徴的ですね。
kenmo氏
そうなんです。
もちろん全く人がいないわけではないんですけど、ブースを出している側の熱量に対して、来場者側の勢いが弱い。
歩いていると、ものすごく声をかけられるんですけど、会場全体の空気を見ると、以前のような伸び方をする市場ではなくなってきたなと感じました。
田代
それが、SaaSに対する見方が変わるきっかけになった。
kenmo氏
なりましたね。
これまでは、企業が業務効率化を考えた時に、まずSaaSを入れようという発想だったと思うんです。
でも今は違う。
まずAIで何とかできないか、と考える時代になっている。
そうなると、SaaS市場そのものがなくなるわけではないんですが、少なくとも“高成長のど真ん中”として見られる時代ではなくなっていくんじゃないかと思いました。
田代
なるほど。
市場が消えるわけではないけれど、評価のされ方が変わっていく。
kenmo氏
そうです。
だから、同じ情報通信セクターでも、何を選ぶかはかなり変わってくると思います。

AI本格化の時代に買われる会社は、既存のやり方を壊せる会社
田代
では逆に、AI本格化の時代に買われる会社はどういう会社だと見ていますか。
kenmo氏
単に「AIを入れています」という会社では弱いと思っています。
その程度の話は、これからどの会社もするようになるので。
そうではなくて、AIによって従来のやり方を壊し、新しい収益構造を作れる会社ですね。
田代
つまり既存事業にAIを少し乗せた、という話では足りないと。
kenmo氏
足りないですね。
今まで人手でやっていたことを大幅に短縮するとか、従来では成立しなかった高利益率のサービスを作れるとか。
そういうレベルまで行かないと、マーケットから評価されにくいと思います。
田代
IRの観点から見ても、そこは非常に重要ですね。
kenmo氏
「AIに代替されません」ではなく、「AIで何を取りにいくのか」を語らないといけないと思います。
守りの説明では弱いんですよ。つまり「変化に耐えられます」ではなく、「変化を利用して勝ちにいく」会社の方が買われる時代だと思います。
“正しいテーマ”でも、投資として勝てるとは限らない
田代
ここは投資の難しいところだと思うんですが、テーマの方向性が合っていても、投資としてはうまくいかないことがありますよね。
印象に残っている事例はありますか。
kenmo氏
ありますね。
たとえばカウリス(153A)は、僕の中ではかなり象徴的でした。
マネーロンダリング(マネロン)対策や本人確認の領域は、今後かなり重要になっていくはずだと見ていましたし、新しいサービスにも強い可能性を感じていました。
田代
マネロンは社会的な必要性も高い分野ですよね。
kenmo氏
そうなんです。
テーマとしては、かなり良いと思っていました。
ただ、問題は立ち上がりのスピードでした。
金融機関はどうしても保守的なので、サービスが良くても導入には時間がかかる。しかも、その前にコストが先行する。
そうすると、方向性は正しくても、投資の時間軸としては苦しくなることがあるんです。
田代
具体的には何が苦しくなるのですか。
kenmo氏
未来の見立ては間違っていなくても、収益化までのタイミングでずれるわけですね。
投資って、何が伸びるかだけじゃなくて、それがいつ数字になるのかまで見ないといけないので。
“正しい未来”を当てるだけでは勝てないんですよ。
田代
他に面白いと感じる企業はありますか。
kenmo氏
SHIFT(3697)です。
2026年8月期上期純利益は減益での着地でしたが、今回の決算はそこまでネガティブには見ていません。
田代
減益でも評価している理由はどこにありますか。
kenmo氏
ポイントは「何に投資したのか」と「それが回収できそうか」です。
AI関連にしっかり投資していて、かつ今回の開示で、すでに投資と同規模の受注があることが見てきた。
ここはかなり重要だと思います。
田代
なるほど。すでに手応えがあると。
kenmo氏
そうですね。
さきほどお話しした通り、今の相場だと、「AIやっています」だけでは評価されないので。
それがちゃんと売上につながるのか、回収フェーズに入れるのか。
SHIFTはそこが見え始めているので、マーケットも反応しやすい状態だと思います。
田代
先行投資でいったん利益は落ちるけれど、その後の回収まで見て評価されていると。
kenmo氏
そうです。
ある意味で、今は“底を打ってこれからどうなるか”を見る局面だと思います。
このタイミングでストーリーが見える企業は、資金が入りやすいですね。
テクニカルは見る。ただし、相場の位置とセットで考える
田代
kenmoさんはファンダメンタル中心のイメージが強いですが、テクニカルも見ているのですか。
kenmo氏
それなりに見ています。
高値更新とか、大底からの反転とか、そういうパターンは意識します。
ただ、テクニカルだけでは見ないですね。
相場全体の位置とセットで考えます。
田代
相場全体の位置というのは、どういう意味ですか。
kenmo氏
今の相場が、上昇の初期なのか、かなり上まで来ているのか、ということです。
同じ高値更新でも、0合目や2合目で出るのと、8合目や10合目で出るのとでは意味が違う。
高いところでのテクニカルだけを見て飛びつくのは、僕はあまり好きではないですね。
田代
なるほど。
一方で、暴落後は機能しやすいということですね。
kenmo氏
そうですね。
暴落のあとにいち早く戻してくる銘柄とか、底打ちの形を見せる銘柄は強いことが多い。
そういう局面では、テクニカルもかなり使えます。
暴落時に見ているのは、指標だけではなく「人の反応」
田代
暴落局面で何を見るか、というお話も印象的でした。
指標だけでなく、人の反応をかなり見ていると。
kenmo氏
見ていますね。
もちろんボラティリティ指標のようなものも見ますけど、それ以上に、今、人がどういう温度感で発信しているのかを見る。
SNSで影響力のある人たちが、どういう言葉を使っているのか、その裏にどんなポジションがありそうなのか。
そこを見ると、単なる情報以上のものが見えてくるんです。
田代
たとえば、何が見えてきますか。
kenmo氏
かなり強めな弱気発言が並んでいる時でも、それをそのまま受け取るわけではない。本当に危機を共有しているのか、それとも自分のポジションを正当化したいのか。
そこは見ないといけない。
最近はYahoo!掲示板なんかもそうですけど、売り煽りが増えてきた時に、「この人はなぜ今これを書くんだろう」と考えるようになりました。
田代
情報そのものではなく、情報の裏を読むわけですね。
kenmo氏
結局そこなんですよ。
何が書いてあるか以上に、なぜ今その言葉が出てきたのか。
そこに人の思惑が見えることが多いので。
