株価を上げるために会社を経営する

田代
自社の株価は見ていますか。

水口氏
めちゃくちゃ見ていますよ。
会社のオフィスの従業員出入口の脇に、株価をリアルタイムで表示するサイネージを置いています。

その正面に自分の社長席があるので、ずっと見ています。上がればテンションも上がりますが、その逆も当然ありますね。文字通り一喜一憂しています。
もしかすると、株価を見ないで業務に集中した方が業績は上がるかもしれないですね(笑)。

田代

そう思っていても、やっぱり見てしまうのですね。

水口氏

基本的に株価のために事業をやっていますので。
上場会社は、現在の株価をより評価してもらうためにあると思っています。

事業で「お客様に喜んでもらうのは何のためか」と問われれば、「最終的に株主を喜ばせるため」と答えます。
ただ、この話って従業員にはなかなか伝わらないですね。

田代

従業員の方にもそういったお話をするんですか。

水口氏

私はよくしますね。
細かい話になりますが、会社法上、社員というのは株式や持分を持っている人のことです。つまり「社員=株主」なんですよ。ですから、「社員=従業員」ではないんです。
私の創業したサイブリッジは、外部株主がいません。非上場の私企業なので、調達の必要がなければ、外部株主を入れる必要もなく、従業員に株式を持たせるつもりも一切ありません。

一方で、上場会社であれば、一定のルールを守れば誰でも株を売買できます。一緒に働いている従業員が株式を持って、所有者になって、株式のリターンを得られる。

だって、従業員は、業績を良くしようと一生懸命働いていますよね。業績が良くなれば株価が上がる可能性があるわけです。それなのに、自社の株を持っていなければ、そのリターンは得られません。

だから「株を持つべきである」、「ただの労働者である『従業員』から資本家と同じ『社員』になるべきである」という話を朝礼でしたりもします。まったく刺さらなかったですが(笑)。

田代

それで、従業員の方に株を配ったのですか。

水口氏

そうです。
ある時、さすがに配りでもしないと保有してくれないなぁ、と感じたので、「よし、配ろう」と決断しました。

田代

配った時、従業員の方の反応はどうでしたか。

水口氏

多くの従業員は、「ありがとうございます」と言ってくれましたよ。現金同等物を無償でもらえるのなら、もちろん嬉しいですよね。
当時は3万円くらいの株を配って、今は10万円から15万円くらいになっているのかな。普通株として持っているので、インサイダー情報がない事を前提として、社内規程に基づいて売ろうと思えば売れます。売却制限などの縛りはありません。

田代

もし従業員がすぐに売っていたとしたら、悲しいですか。

水口氏

それは悲しいですね。でも、そうしたことも想定しての施策ですから、従業員が売却しても、それは仕方ないと思っています。

子どもへの株式承継と共同保有の問題

田代

水口さんのお子さんは株を持たれているんですか。

水口氏

今はまだ持っていないです。
共同保有、大量保有の概念で言うと、子どもたちが共同保有者になるというリーガルのコメントがありました。子ども8人にfonfunの株式を持たせた場合、大量保有報告書で子どもたちのフルネームが全部明らかになってしまう。これは避けなければならないと思いました。さすがに子どもの名前はマズイでしょう。何が起きるかわからない時代ですから。

ただ、最近の金融商品取引法の改正に伴う大量保有報告のルール改正もあり、夫婦は共同保有から除外されるようになったので、妻には株を持たせられるかなと思っています。

田代

上場企業に投資する前、ベンチャー投資も積極的にやっていましたよね。

水口氏

やっていましたね。
2010年前後くらいにベンチャー投資をしましたが、だいたい失敗しました。失敗を分析した結果、上場会社の中小型株の方が、ベンチャー企業に比べると担保価値もあるし株式市場という流動性もある。総合的にメリットが大きいと判断しました。そこからですね、中小型株を買うようになったのは。

潰れない会社をどう作るか、「演出」も必要

田代

創業時に工夫した点はありますか。

水口氏

どうやったら潰れない会社にするかだけを考えていました。これは今でも常日頃考えています。どうやったらお金がちゃんと入ってくるか。安定した収入をどう作るか、ということです。

サイブリッジの創業期は、大きな会社と仕事ができるような演出を多くしてきました。具体的には、ベンチャーだとしても、しっかりとした会社だと感じてもらえることが大事だと思っていました。そのために、社員9人の時に、家賃300万円のオフィスを借りていましたし、社員30人の時には家賃600万円のオフィスに入っていました。

私が20代だった頃は、ちょうどインターネットで賃貸物件の家賃が全てオープンになっており、取引先が簡単にオフィス賃料を調べることができました。高い家賃を払えるというのは、それだけの収益力があるということですから、大企業の方からすると安心できる材料と考えてもらえる。

また、周りのベンチャーに対しても、サイブリッジは勢いがあると思ってもらうこともできます。

田代

演出ですか。

水口氏

そうです。
当時、取引先の担当者が社内稟議を出す時に、「あの会社は伸びているし、ちゃんと家賃も払えているから安心です」と言える材料をどれだけ用意できるかを必死に考えていました。

そうやって大手の仕事を増やしていく。大手の仕事が増えると、大手との実績が増える。そうすると、また別の会社からも大丈夫そうだと思ってもらえる。こうした良い連鎖を作ることを心がけていました。

田代

なるほど、大手企業との実績作りは重要ですね。
このほか、注力していたことはありますか。

水口氏

毎月のストック収入を増やすことです。
もともとは企業のホームページ制作を学生時代に個人事業からスタートさせて、その後、受託開発もやっていました。その隙間時間で自社メディアをたくさん作りました。

例えば「塾講師ナビ」という、学習塾に特化した求人媒体は、月額掲載課金で、毎月求人掲載費をもらうモデルです。20年経った今でも多くのお客さんに使ってもらっていて収益を生んでいます。そういうサービスがサイブリッジにはいくつもあります。

メディアの月額掲載課金やシステム開発の保守運用費など、毎月ストックで入ってくるお金をなるべく増やし、そのキャッシュフローを、より大手のお客さんに取引の安心材料になるような家賃など意味のあるマーケティング投資に全振りする。そうすることでさらに大きい仕事が取れる。こうした循環を意識していました。

田代

今でも、演出は必要だと考えていますか。

水口氏

今はあまり意味がなくなってしまいました。上場企業ですと、何もかもオープンになっている状態ですから。当然、事業内容や規模感などは見えてしまう。しっかりと現在と未来の姿を示した上で、予測可能な将来価値をしっかりと市場に評価してもらえることを心がけています。