人材紹介だけでは、本当に会社は変わらない

田代

D&Mカンパニーは、当初から現在のように資金、人材、経営支援を組み合わせる構想だったのでしょうか。

松下氏

はい、そうです。
人材会社時代、医療法人とのつながりが増え、経営幹部や事務長クラスの人材を紹介する仕事には、一定の手応えがありました。
ただ、実際に経営者と深く関わる中で、人を紹介するだけでは解決できない課題が多いことが分かってきました。

田代

優秀な人材を入れれば、経営が改善するとは限らなかった。

松下氏

そうです。
優秀な人を紹介し、その方が改革を進めると、既存組織と衝突する可能性があります。
最初は期待されて入ったにもかかわらず、成果を出すほど周囲から邪魔な存在と見られ、最終的には組織から外されてしまう。そうしたケースもありました。

田代

人材個人の能力ではなく、受け入れる組織側にも課題があったわけですね。

松下氏

人を一人入れただけで、組織全体を変えることは簡単ではありません。
また、人材会社は、人を紹介した後、その会社の経営へ深く踏み込むことができません。


「もう少しこうすれば改善できるのに」と感じても、外部の人材会社という立場では限界があります。

田代

人材紹介というサービスの限界を、現場で実感された。

松下氏

人材紹介には人材紹介の良さがあります。
実際、優秀な方が入ることで、経営が良くなるケースもあります。
しかし、本当に問題なのは人材ではなく、資金繰りや経営管理、組織運営であることも多い。それらを変えなければ、紹介した人材も力を発揮できません。

経営者の悩みは、一つずつ切り離せない

田代

医療機関の経営者は、具体的にどのような課題を抱えていたのでしょうか。

松下氏

人材不足だけではありません。
診療報酬制度への対応、設備投資、資金繰り、病床稼働率、組織づくり、事業承継など、さまざまな課題があります。
しかも、それぞれが独立しているわけではなく、すべてつながっています。

田代

つまり人を紹介するだけでは足りなかった。

松下氏

そうです。
人材を採用しても、資金が回らなければ経営は苦しくなります。
一方で、経営の仕組みや人員配置を見直せば、新しい人を採用しなくても、既存の職員だけで改善できることもあります。

田代

当時は、そうした課題をまとめて支援する会社が少なかったのでしょうか。

松下氏

人材会社、金融会社、コンサルティング会社はそれぞれ存在していましたが、資金、人材、経営を一体で見る会社は、ほとんどありませんでした。
それなら、自分たちが担えばいいと考えました。

田代

松下社長が歩んできた金融と人材の経験が、そこでつながった。

松下氏

そうですね。
その二つに経営支援を組み合わせれば、医療・福祉業界に対して、これまでとは違う支援ができると考えました。

同じ船に乗り、経営に踏み込む

田代

人材紹介に加え、資金提供へ踏み込んだ。その結果、D&Mカンパニーのビジネスプランが出来上がったのですね?

松下氏

はい。そうです。
銀行員であれば、若手でも社長に会うことができます。
なぜかというと、会社にとって重要な資金を提供しているからです。
融資をする銀行とは、経営者が直接話します。

田代

人材会社とは、経営者との距離が違う。

松下氏

まったく違います。
人材会社の担当者が、経営者と継続的に直接話す機会は多くありません。
一方、資金を提供する立場になれば、経営者もこちらの意見に耳を傾けてくださいます。

田代

資金を出すこと自体が目的ではなく、経営へ深く関わるためでもあった。

松下氏

そうです。
コンサルティングだけでも、経営について助言することはできます。
人材紹介とコンサルティングを組み合わせることもできます。


ただ、本当に経営を変えるのであれば、外から正論を言うだけでは足りないと思いました。

田代

自分たちもリスクを取る必要がある、と。

松下氏

自分たちも資金を出し、同じリスクを負う。そうしなければ、本当の意味で経営者と同じ立場には立てません。
支援先の経営が良くなれば、私たちも利益を得られる。反対に、経営が悪化すれば、私たちも損失を負います。

田代

そこで、「同じ船に乗る」という考え方が生まれたわけですね。

松下氏

外からアドバイスするだけではなく、自分たちも同じリスクを負う。
同じ船に乗らなければ、本当の支援はできない。それが、現在の事業の基本的な考え方です。

田代

銀行の融資とは、どのような点が異なりますか。

松下氏

銀行の場合、融資を実行すれば、一つの仕事は完了します。
もちろん、その後の管理やフォローはありますが、基本的には金融機関と借り手という関係です。
私たちは、資金を提供して終わりではありません。

田代

支援先が改善するところまで関わる。

松下氏

支援した医療機関が良くならなければ、私たちの存在意義もありません。
必要であれば、人材採用を支援します。経営改善にも関わります。事業承継やM&Aの相談を受けることもあります。
一つのサービスだけでなく、経営全体を見ます。
成功すれば一緒に喜び、苦しい局面では一緒に知恵を絞る。その関係があるからこそ、経営者も本音を話してくださいます。
私たちは、単にサービスを売る会社ではなく、経営者が困ったときに、最初に相談していただける存在を目指しています。