双子経営は「同じ」ではなく「半身」だった
田代
やはり一番興味深いのが、お二人が双子で経営されていることです。
兄弟経営の上場企業はいくつもありますが、双子となると非常に珍しいですよね。
瑞木氏
実は他にもいらっしゃいますよ。
以前、双子で会社を経営されていた方々と四人で食事をしたことがあります。
田代
双子で経営するメリットは何でしょうか。
瑞木氏
エネルギーが二乗になる感覚があります。
一人で経営していると、意思決定は自分だけです。でも私たちは同じ方向を向いているので、良い方向にも悪い方向にも、一気に進みます。
スピード感は、一人で経営する場合とは全然違うと思います。
田代
考え方が似ているからですか。
杏奈氏
根本の前提が近いのでしょうね。
二十歳くらいまでは同じ家で育っていますから、普通の経営者同士に必要となる前提のすり合わせが、ほとんどありません。
ただ、それだけでは会社は続かなかったと思います。私たち二人だけだったら、途中で終わっていたかもしれません。
田代
創業メンバーであり、現在も経営を支える佐々木さんの存在ですね。
瑞木氏
学生時代からの良き友人であり、大切な仲間です。
創業メンバーとして会社を支え続けてくれており、その貢献は非常に大きいです。
もちろん、社員やクリエイターのみなさんの存在も大きいです。
「もっと面白いことをやろう」──創業は自然に始まった
田代
創業そのものは、どちらから「会社をやろう」と言い出したのでしょうか。
瑞木氏
私ですね。
ただ、「どちらが創業した」という感覚ではなく、自然に始まりました。
杏奈氏
そうですね。
私は普通に朝起きられなくて留年していたので、アルバイトで週5日働いていました。
そのときに、「誰かに指示された仕事をするより、自分たちで何かをやった方がより面白いかもしれない」と思うようになりました。
それが起業につながっています。
田代
最初からゲーム事業だったのでしょうか。
杏奈氏
いいえ、学生時代に個人事業としてインターネットメディアの運営を始めたのが、原点ですね。
ある程度の売上も立っていたので、その後マンションの一室で会社を立ち上げて、女性向けインターネットメディアを運営していました。
最終的には月商一千万円くらいまで伸びたので、十分に生活できるくらいの売上はありました。
ただ、面白い仕事ではありましたが、このままでは労働集約型になってしまうと思ったんです。そこで、「もっと面白いことをやろう」と話し合い、女性向けゲームへ挑戦しました。
ゲーム開発の経験はありませんでしたが、エンターテインメントに関わりたい気持ちは昔から強くありました。
新卒で新聞社へ就職したのも、その延長線上でしたから。
田代
創業当初から、「IP」で勝負しようという考えだったのでしょうか。
杏奈氏
当時は「IP」という言葉自体をあまり意識していませんでした。
ただ、最初からBtoBではなく、一般のお客様に向けたサービスで収益を上げようという考えはありました。

実は、一度だけ受託事業にも挑戦したのですが、営業が全く向いていなくて、一件も受注できませんでした(笑)。
一週間ほどで、「これは違うね」とやめています。
田代
ゲームの開発となると大きな初期投資が必要にも思えますが、創業期に資金調達をして会社を大きくしていく、という発想ではなかったのですか。
杏奈氏
そもそも、資金調達という仕組み自体を知りませんでした。
私たちが創業した頃はスタートアップが盛り上がり始めた時期でしたが、その世界とは少し距離がありました。
瑞木氏
創業当時はいわゆるベンチャー企業というよりも、好きなことを仕事にした人たちの集まりという感覚でした。
ちなみに私は大学では生命認知科学を専攻していて、研究室ではDNAなどを扱っていました。
一方で会社ではゲームやエンターテインメントをやっている。あまりにも世界が違って、「大学を卒業するか、会社に集中するか」は最後まで悩みましたね。
役割を委ね合うことで、会社は前へ進んだ
田代
やはり言葉にしなくてもお互いの考えていることがわかるみたいな感覚はあるのでしょうか。
杏奈氏
そうですね。
体験やDNAなど、共通している部分が多いので、「なぜ相手がそう考えたのか」は、ほとんど説明されなくても分かります。
田代
では、お互いに「ここは相手にはかなわない」と思う部分はありますか。
杏奈氏
努力を続けられるところですね。
瑞木は、目標達成のために必要だと思えば、好き嫌いに関係なく、高い強度でやり続けられます。
それは私にはない能力です。
田代
瑞木さんから見た杏奈さんはいかがですか。
瑞木氏
頭の良さです。
物事を深く考える力が、本当にすごい。一見関係のないもの同士を結び付けて、一つの考え方にまとめてしまう力があります。
私には、それはできません。
田代
役割分担も自然と決まっていったのでしょうか。
杏奈氏
私はコンテンツや企画に関わることが多いですね。
一方で瑞木は、人事もできますし、経営全般もできます。
田代
お話を伺っていると、お二人の役割がよく見えてきます。
杏奈さんは作品や思想を深く掘り下げるタイプ。
一方で瑞木さんは、会社を前へ進める推進力を担っているように感じます。実際、「上場しよう」と最初に言い出したのも瑞木さんだったそうですね。
杏奈氏
そうですね。
会社を大きくしたいという気持ちは、昔から瑞木の方が強かったと思います。
人事もそうですし、上場もそうです。
私はコンテンツを考えていますが、瑞木は「会社をどう成長させるか」を自然に考えるタイプですね。
当時、社内には「上場とは何か」を知っている人があまりいませんでした。
「上場って何だろう。じゃあ、やってみようか」というところから始まっています。
田代
会社を大きくしたいという気持ちが強いのですね。
瑞木氏
野心を隠さないタイプです。外資系証券会社出身ですから(笑)。
田代
子どもの頃は、お互いをライバルとして意識していたのでしょうか。
杏奈氏
いいえ。競い合うというより、それぞれがマイペースでした。
両親からも比べられることはありませんでしたし、「競争しなさい」と言われたこともありません。
瑞木氏
怒られるときも平等でした。
杏奈氏
私たちは、生まれたときから圧倒的に分かり合える存在がいました。
これは最近ようやく言語化できたことなのですが、双子は「半身」に近い存在です。

例えば、幼い頃に二人とも冒険好きだったとします。でも、二人とも同じリスク選好だと全滅するじゃないですか。だから私は、その能力を瑞木へ委ねたのではないかと思っています。
逆に、二人とも深く考え込むタイプになると、今度は動けなくなる。だから深く考える力は私が受け持った。本来なら自分で伸ばす能力を、お互いに相手へ委ねることで、一人ではなく二人で一つの人格のように補い合ってきた。そんな感覚があります。
田代
非常に興味深い考え方ですね。
それは昔から感じていたのでしょうか。
杏奈氏
感覚としては昔からありましたね。
でも、うまく説明できるようになったのは、ごく最近です。似ているのに違う。その理由を考え続けた結果、たどり着いた答えでした。
